星の瞬く夜にproduction notes


この話を書くきっかけになったのが今年の2月中旬。
会社帰りの車内でTINÖRKS(ティノークス)の「レチクルの彼方」を聴いていた時でした。
この曲は歌が入っていて、歌と歌の間と最後にピアノが入るのですが
そのピアノの奏でる旋律がとても甘美で、同時にどこか切なくて悲しく感じさせるのです。
その音色に感動して聴き入っていると、突然頭の中である話が映像として
頭の中にあるスクリーンに一気に映し出されてきました。


かなり昔に小説を書いていたことがあるのですが
その時は曲を聴きながら、イメージを膨らませて書いていました。
それでも1曲にワンシーンしか浮かんできませんでした。


それが最初から最後まで、1話まるまる、走馬燈のように浮かんできたでは
ありませんか!
こんな経験はなかったので自分が怖くなりました(笑)


その日のうちに、スマホのメモ帳を開いて一気に話の原案を書き上げました。
この話は、本当は絵本にしたかったのですが、自分に絵心がないので(泣)
いや・・・・あってもコミカルな絵しか描けないので早々にあきらめました。
できるだけ分かりやすく、子供でも読めるようなシンプルな話にしたいなと思いました。


でも、書き上げていくうちに、これは子供が読むには難しいのかなとも思ってきました。
どちらかといえば、大切な人を亡くした人たちに読んでもらいたいなと思いました。


私は5年前に母親を亡くしました。
時には厳しく、時には面白いことを言う、とても大好きな母親でした。
話が出てきたのが命日の4日前でした。
そんな母親がこの話をプレゼントしてくれたかもしれません。


そんな母親の期待?に応えているのかどうかは不安ですが
十数年ぶりの創作活動でできたこの作品を温かく見ていただければ幸いです。




この話はTINÖRKSの曲をモチーフにして書きました。
大半は「レチクルの彼方」からなのですが、話を書いていくうちに
他の曲も入れたいなっていう思いが出てきました。


ここでは、どの部分にどの曲を使ったかという裏話的なことを書こうかと思います。


「Lino」
まず最初の部分はこの曲をプロローグ的にあてはめました。
実は最初の部分がどうしても最後まで浮かんできませんでした。
今までは最初の部分は2,3時間かけても半分意地で(笑)書き始めてましたが
この話だけは途中から書き始めてしまったので、どうしようかと最後まで迷いました。

というのも、最初はアニメのナレーションみたいに、軽く流そうかと思ってました。
父親が主人公の子供に母親は星になったんだよと言い聞かせるところまでは。
でも、話が出来上がるにつれて、それでは済まないなと思いました(汗)

母親の死因も含めて、どういう展開で始めようか、かなり迷いましたが
なんとかまとまりました。
話の中ではこの部分が一番きつかったです。

「Lino」は父親が子供に母親が亡くなったことを話してから
子供が湖のほとりで星を眺めているところまでをモチーフにしています。


「レチクルの彼方」
この曲がこの話の大半を占めてます。
登場人物は最初は人にしようかと思ったのですが、絵本にしたいなという思いが
あったので、動物のクマにしました。
登場人物を人にしてしまうと、いろいろと出てきそうなので、なるべく話を
シンプルにまとめたいという思いがありました。
「レチクルの彼方」の歌詞に「コグマ座のポラリス」が出てくるので、それが
クマにするきっかけのひとつでもあります。
また、最初から舞台を森の中に設定していたというのもあります。

子供が奇跡的に母親と再会する場面ですが、再会するまでの子供の心境
夜空の星たちの様子、そして母親が子供と再会する状況・・・・・・。
まだ表現しきれていないところもあるかもしれませんが、なるべくシンプルに
表現したいなと思いました。
再会の場面がこの曲の歌と歌の間のピアノの旋律の部分になっていますが
うまく合っているかな・・・・。


「Terrarium」
実は最初はこの曲を入れる予定はありませんでした。
話が進んでいくにつれ、後から入れたほうがいいと思って入れました。
「レチクルの彼方」も浮遊感はあるのですが、どちらかといえば幻想感の方が強いと自分は思いました。
母親と子供が空に浮かんでいくシーンに当てはめたいなと思って、この曲にしました。

親子がいろんな星を巡り、最後にある星にたどり着きますが、束の間の楽しい時間を
この曲に当てはめながら書きました。
文章としては短めですが、長く書こうとすると長編になりかねないなと思ったので
短めにしています。


「レチクルの彼方」
そして、またこの曲に戻ってきます。
最後に立ち寄った星での親子の出来事。
夜明けになるにつれ、だんだんと近づいてくる親子の別れ。
母親と別れたくない子供の心境。
いろんなことがこの後半で出てきます。
最後に立ち寄った星の表現方法も苦労しました。
雲のテーブルと椅子、それに子供が食べている木の実。
最初は木の実ではなかったんです(汗)
ミルクにしようかと思っていたのですが、この話に出てくるのはクマなので
コグマってミルクを飲むのかな?っていう疑問が出てきて、急遽木の実になりました。
動物園ではミルク飲んでますけど、ここでは野生のクマの設定なので・・・・。



「星のピアノ」
「レチクルの彼方」でも、最後の湖のシーンは浮かんでいましたが
より鮮明にするために、この曲を当てはめました。

この曲では父親に見守られながら、子供が母親のいる星をじっと見つめている場面を
モチーフにしています。

母親のいる星をどのように表現するか。
星の位置をどうするかにしてもかなり考えました。
星座の名前を出すと、どうしても位置的にどうとか、季節的にどうとかいろんな
疑問が出てきてしまうので、十字星のとある星ということで落ち着きました。



創作は十数年ぶりなので、きつかったのもありましたが
なんとか出来上がると達成感があって、よかったなとほっとしています。
つっこみたいところが出てくると思いますが、そこはなんとかご容赦を(汗)