ひこうきぐも production notes



今回は短編です。
昨年初めて、違うアーティストさんの曲をそれぞれ1曲、合計3曲で短編を作りましたが
今年もこの夏に、同じ形でやることになりました。
というか、偶然そうなってしまったというのが正しいんですが。



今回も3日間で短編を書きました。
昨年はクマが主人公で、ちょっと冒険ものの?話でしたが
今回はがらっと変わって、ラブストーリー?みたいな話の内容になりました。



今回使った曲は、どれもいい曲ばかりで・・・・・・。
途中、書いていてかなり悩んだところもあったのですが、無事に書き終わりました。



それでは、1曲ずつ順番に書いていこうかなと思います。



1.TINÖRKS「思う。」

この曲を最初に持ってきたのは、今回の短編を書くキッカケになった曲だからです。
最初に聴いていて、なぜか鎌倉のイメージが浮かびました。
「路面電車の窓 夕焼けを眺めている」という歌詞があり、
それが鎌倉にあるものなので(江ノ電ですね)、それがイメージにつながったのかな。



鎌倉は私が好きな場所で、好きな作家さんが住んでいた場所でした。
学生の頃、その作家さんのファンになり、作家さんが住んでいた生家やゆかりの場所に
何度も行った思い出があり、今もその作家さんの墓参りにも行っています。
今は鎌倉に行く時間があまりなくて、年に2,3度ぐらいしか行けていませんが
学生の頃は月に1度は足を運んでいました。



学生の頃、鎌倉のあちこちに行っていたので、この曲を聴くと、その頃の自分を思い出すんですよね。
あの頃はこうだったなとか。ノスタルジーに浸れるんです。



なので、短編を書く前までは今回の舞台は鎌倉にしようと決めていました。
書く前に、鎌倉に行きたいなと思っていましたが、コロナや大雨でなかなか行くタイミングが合わず
じゃ、もう行かなくていいから、記憶の中にある鎌倉を舞台にして書いてみようと思いました。



主人公のエリとユキトが行く海岸は、由比ヶ浜海岸をイメージした海岸です。
ただ、その近くに高校や、海沿いのレストランがあるかどうかは突っ込まないでください(^^::
海沿いのレストラン・・・・由比ヶ浜のかなり先の方で見た記憶があるんだけどなあ。
もうなくなっちゃったかな。



この曲は最初の部分だけでなく、短編全体としてのイメージ曲だと思っています。
この話は、高校を卒業してしばらく経ったある日、高校の同窓会に嫌々ながら参加したエリが
ユキトと再会したことによって、過去と向き合いながら、ユキトとの間にできた蟠りを解決していく。
そしてラストには蟠りがなくなって、ユキトと仲直りして、前を向いていくという話です。



この短編でいう過去とは、高校の時に仲良しだったマリとユキトの思い出、そしてマリの死。
そしてユキトを巡って、愛情を取るか、それとも死期が近いマリとの友情を取るかのエリの心の葛藤です。
愛情を取るか、友情を取るかっていうのはラブストーリーに結構たくさんありますよね。
私はそんな経験ないから、もしそんな状況だったら、相当迷うし、苦しいんだろうな・・・・。



話が違う方へ行ってしまいましたが
この曲の歌詞を聴いていると、過去に遡って、過去の自分に出会えるような感じになります。
よく行く場所も、小さい頃に行った時と今ではなんだか違う。
今まで行った場所を思い出すことで、過去の世界に生きているもうひとりの自分に会えるような気になるのです。



生きているといろんなことがあるけれども
過去を振り返ることで、懐かしいと思ったり、あの時の自分はこんなことを考えてたんだと思ったりするけど
それを糧にして、これからも生きて行こうという印象を受けました。



最初からいろいろと書いてしまっていますが(^^::
この曲では、最初のエリが海を眺めているところから、同窓会が終わって、海岸でエリがユキトに向かって
責めているところまでを一区切りにして使ってもいます。



2.Hitsuji 「she」

Hitsujiさんの曲は前々回、書いた短編「雨宿り」で「Faraway」を使いました。
今回使うのは2度目になります。



Hitsujiさんが作る曲は、全体的に丸みがあるというか、尖っていないというか・・・・。
優しい曲が多いっていうイメージがあります。
最近になって聴き始めたんですけど、実際、優しくて暖かみのある曲が多いです。
音のジャンルはChillやLo-Fiなんですが、ヒーリングでもいいのかなと・・・・。



今回使った「she」は、最初は使う予定ではありませんでした。
別の曲を使う予定でしたが、短編を書く前に3曲を通しで聴いたところ、私が思っていたイメージと合わなかったので
探したところ、この「she」になりました。



「she」というのは短編を書く前までは、マリをイメージしながら書いていこうと思っていたのですが
いざ書いてみると、これはエリの心の中の葛藤でも合うんじゃないかなと思ってきました。
2曲目はエリの過去をイメージした曲にしようと思っていたので、この「she」の持つ曲のイメージが
ぴったりとはまりました。



曲はギターとピアノがメインで、途中リズムトラックが入り、最後にシンセの音が少し入ってますが
最後のシンセの音がとても印象的で、初めて聴いた時、これはあのシーンに使おうと思いました。



あのシーンとは、ユキトが海岸で空を見上げてエリに言った、あの言葉です。
飛行機雲が2つ、飛んでいるシーンの直前のあの言葉です。



ということで、この曲ではエリの過去に遡って、過去どんなことが起こったのか。
エリがなぜユキトを避けるのか、理由が分かるエリの回想シーンがメインになります。
そしてさっき書いた、ユキトのシーンまでになります。



3.小笠原幸子 「秒針」

短編の最後の部分は、Twitterのフォロワーさんで、作曲家でジャズピアニストの小笠原幸子さんの曲。
彼女の代表曲と言っても過言ではないくらいの名曲「秒針」。



ピアノだけの曲なんですけど、聴いていて飽きない。
とても素晴らしい曲です。
ただ、2分ちょっとの短い曲なので、何度も聴いてしまいます。
短編を書いていた時も、聴きながら思わず泣いてしまうくらいの名曲です。



夕焼けが広がる空に、2つの飛行機雲が飛んでいく・・・・・。
それをこの曲を聴きながら想像しただけで、涙が出てきてしまいました。
あまりにも曲と上記のシーンがぴったりで。



この「秒針」はアルバム「THE SOUND OF A TICKING CLOCK」に入っているバージョンを使いました。
このアルバムを買った時、曲解説も一緒に入っていたので読んでいました。
その「秒針」の曲解説は、気になる方は彼女のCDを買ってください(^^::
解説の内容を少しですが、短編の参考にさせていただきました。



短編の後半からラスト手前までの部分は、エリがユキトの話によって初めて知った事実に驚いて
過去(マリの死)に囚われていた自分に気が付き、さらにユキトの高校生当時の気持ちを知って
ユキトとの蟠りが溶けていきます。
エリの心の変化と、現在の心情。エリの「今」をイメージした曲を探していて、小笠原さんの「秒針」を
使おうと思いました。



予定では、最後にエリがマリの墓参りに行くシーンでは、最初の「思う。」を使おうと思いましたが
「秒針」のままで行こうと、書いている途中で思い、変更しました。
エリが最後、空の入道雲から飛行機雲がすっと出てくるところを見上げているシーンも
「秒針」がぴったりだったからです。
それは、エリが過去の蟠りを捨てて、前を向いていこうとするシーンでもあったからだったのです。



今回、ちょっと複雑な話を書いていて、中盤部分で書いていたのを消して書き直したり
全部書き終わって、見直しをしたら、ちょっと納得がいかない部分があって、さらに付け加えたりと
今回はいろいろと苦しいところもありましたが、3日で書き終えてほっとしています(^^::



最後に、今回のタイトル「ひこうきぐも」ですが、これもどうするか迷いました。
漢字の「飛行機雲」だとちょっと味気ないと思い、ひらがなにしてみました。



8月はお盆ですが、今回はコロナで帰省ができない人にとっては辛いですね。
お墓参りには行けないけれど、亡くなった大切な人のことを思い出して
家族や友人と電話などで話をしながら、懐かしんでみてはいかがでしょうか。



次回はまた「星の鏡」シリーズの続きです。
真夏に真冬の話を書くとは・・・・・(^^::
次回もお楽しみに。