夢  production notes




今回は、予定にはなかったこの話についての制作裏話を・・・・。



書くきっかけになったのは、前回「星の鏡」シリーズを書いている時にtwitterで
TINÖRKS(ティノークス)の新曲「europa」がアップされたことから始まってます。
「星の鏡」を書いた後、ゆっくり休もうと思ってたんですけど・・・・(^^::
新曲なので、せっかくだから軽く聴こうかな・・・と思ったのがいけなかった。
「europa」を聴いた後、さっそくというか、なんとなく話の断片が浮かんできてしまったんですよね。



「europa」を聴いてまず思ったのが、涼しげな音。
南極の海に浮かんでいる大きな氷河。雪と氷に包まれた大地と山々。
そこに住む動物たち。ペンギンやシロクマ、アザラシやカモメ・・・・。
そして、曲の途中で聞こえてくる海の波の音。
後でヘッドフォンで聴くと、臨場感があってとても素晴らしい世界観が広がっていました。



最初は、「星の鏡」シリーズを書いた後なので、(その前にも「光」を書いているし)
しばらく休みたいなという思いが優先してたので、書きたいけど、書くのは9月か来年かなと
思ってました。
でも、それに反して「europa」を聴くたびに「書きたい」という思いは増すばかり(^^::
それじゃ、書いちゃおうか!!ということで書くことになりました。



最初は「europa」だけで話を書こうかと思ったのですが、「europa」を聴くたびに
何かある曲が気になっていました。
この曲と合わせて聴くと、なんかいいんじゃないかなと。
それがヴァンゲリスの「Theme from Antarctica」です。
YOUTUBEで検索をして動画が見つかって聴いてみると、「europa」となんか合っていていいなと
思いました。



それと同時に、今回初めてのことをやってみたいと思いました。
来年.queさんの曲で短編を書いてみたいなと思っていて、ヴァンゲリスの曲とTINÖRKSで話を書くんだったら
ついでに.queさんの曲も合わせて書いてみようと思ったのです。
こうして、3曲でひとつの話を書くことで決まりました。



問題は.queさんのどの曲を使うのか?
ヴァンゲリスもそうなのですが、それぞれ世界観が違うので、使う曲順も含めて
どうするかを決めました。
.queさんの曲をどれにするか?については、最初はどうしようかと思ったのですが
実際、それほど時間はかからずに決まりました。
.queさんの曲は、東京MXテレビが夜中のある番組でよく使っているので
その番組で使っている曲の中から、これなら合いそうっていうのを選びました。
それが「Wonderland」という曲です。



次に、どの曲順にするか?
それについてもあまり時間はかかりませんでした。
3曲が決まった時点で、もうある程度話は頭の中でできていたのです。
それぞれの曲については、長くなるのでまた後で書きます。



3曲の音を聴きながら、話を書こうかとなった時に、問題になったのが場所でした。
TINÖRKS「europa」については、衛星エウロパをモティーフにしているので
それに近い場所を想像して書いていけばいいと思っていました。
でも、それは主人公の夢の中での話ですので、なんでもありにしてしまうことができるのです。
主人公が住んでいるのは雪と氷に包まれた南極か、北極か。
どちらにすればいいのか迷って、南極がどういう場所なのか、北極がどういう場所なのか
東京駅前にある大きい本屋で調べることにしました(^^::



本屋でそれらしい本を見つけて立ち読み(^^::(後でちゃんと買いました)
ここでまた問題が・・・・・。
主人公はシロクマにする予定だったのですが
南極にはシロクマは住んでいないのです(^^::
住んでいるのはペンギンとアザラシとカモメなどなど。
北極だとシロクマは住んでいるのですが、環境的になんだかこちらが考えていたものと違うのです。



それじゃ、主人公をペンギンに変更するか考えたのですが
ペンギンは団体行動なので、こちらが考えている話と違ってきてしまうんです。



どうしたらいいのかなと思い悩んでいる時に、救ってくれたのは
同じ本屋で偶然見つけて買った、ショーン・タンの「アライバル」の本。
この本、人気みたいで、どの本屋を探しても見つからなくて・・・・。
東京駅前の本屋でも、もしかしたらないかもしれないなと正直期待はしてませんでしたが
ようやく手に入れることができました。



帰ってさっそく読みました。
「アライバル」は絵本ですが、文字は1つもありません。
絵だけで、想像しながら読んでいくのです。
なので、毎回感じるものが違ってきます。



読み終わったら、場所をどうするかなんて問題は気にならなくなりました。
架空の場所を、作ればいい。
ありそうで、どこにもない場所を作ってしまえばいいって。
そういう結論になりました。



なので、話の始まりが「海と氷に囲まれた島」になっているのです。
「海と氷に囲まれた島」、ありそうで、なかなかないでしょう?
南極と北極以外は(^^::
主人公もシロクマのまま、変更しないで済みました。



この話は、主人公の男の子と母親が歩いていると、氷が溶けてびちゃびちゃになっている場所に
出くわすのですが、これは少し前にニュースでやったグリーンランドの氷が溶けて
犬ぞりの犬が水に濡れながら走ってそりを引いているところからきています。



地球の温暖化が進んでいるということですよね。
最近の九州での大雨もそうですが、だんだん酷くなっているように思います。
数十年前は川が氾濫するなんて、そうめったに起こったことはなかったと思います。
それが、ここ数年で頻繁に発生するようになっています。



南極や北極の氷も溶けていて、海の水位がだんだん上がっているというニュースもあります。
このままだと、水位が上がってしまって、もしかしたら日本が沈没してなくなってしまうかもしれない。
小さい島は、すでに沈んでなくなってしまっているところもあるようです。



温暖化を止めることができるのは私たちですが、同時に進めてしまっているのも私たちです。
世界中の人達がなんとかしなければいけない問題だと思います。



最初は地球温暖化をテーマにしようと思っていたのですが
書いているうちに、別の思いが出てきました。



それは、生き物は一人だけでは生きられないということ。
いつも、誰かに支えられて生きているということ。



中盤で男の子は夢の中で一人になります。
最初は両親がいなくて寂しい思いをしますが、夢の最後の方に湖の上で滑りながら
一人だから何をしてもいいんだと思っています。



これは、一人だから自分で何もかもやらなきゃいけないっていう思いと
寂しさを紛らわせるために、自分に言い聞かせている場面です。



でも、誰かの声が聞こえてきて、男の子ははっとします。
そして母親に起こされて、現実に戻ります。
男の子は両親がいると分かって、ほっとします。



子供は親の姿を見て安心するのです。
子供は親の支えがあって生きているのです。



また、最後の場面でおじさんと再会を果たしますが、おじさんはこう言っています。
「最初は一人でもいいと思っていた。けれど一人じゃ何もできない。
いつも周りの誰かに支えられて生きているんだ」



あなたのまわりを見てみてください。
一人で生きているつもりでも、知らないうちに周りの人達に支えられて生きています。
出かけて電車に乗る時、電車は運転手がいるから、動いています。
会社にいる時でも、仕事は一人だけでは進みませんよね。
学校でも、先生がいなければ授業や部活ができませんよね。



それは人だけではなくて、動物も植物も同じ。
動物は他の動物を食べて生きているし、植物は水と太陽の光で成長します。



必ず、何らかのサポートがあって生きているのです。



なんだか話が重たくなってしまいました(^^::



最後になりましたが、曲順とどのシーンに使ったかを説明します。



1.ヴァンゲリス「Theme from Antarctica」


数十年前、映画「南極物語」のテーマ曲になった曲です。
日本版とアメリカ版がありますが、日本版の方です。
私もこの映画の曲のイメージが強いです。
実際、映画館に観に行きましたし、テレビの放送でも何度も観ました。
ラストの数分・・・・あの感動が今でも忘れられません。
また観たいな。



TINÖRKSの「europa」とどちらを先に持ってくるか迷いました。
この曲と「europa」の2曲を順番を変えて何度も聴いていって
この曲を最初に持ってきました。
聴いていくうちに、話が出来てきたのもありましたけどね。



この曲では、男の子と母親が氷が溶けている場所に出くわして
母親が父親に相談して寒いところに移動しようと動き出すところから
夜、親子が山の上で夜空を見ているところまでを書いています。



実は、この話を書いている間に.queさんの新曲「stargazer」が出たので
聴いてみました。素敵な曲で上記の夜空のシーンにぴったりだったのですが、
やっぱり次の「europa」の流れを考えると、ちょっと音的にどうかなと思ったので
使うつもりはありませんでしたが、書いているうちに「stargazer」の影響が出ているのに
気が付きました(^^::
夜空のシーンにこの「stargazer」は似合いますね。



2.TINÖRKS「europa」


親子が夜空の流れ星を見ていると、オーロラが現れます。
男の子はオーロラに乗って、ある場所に辿り着きます。
その場所をモティーフにしたのがこの曲です。



男の子の夢の中での出来事なので
何でもありにしようと、最初は雪が積もっていたり、夢の最後に雪を降らせたらどうだろうと
思っていましたが止めました。
衛星エウロパをモティーフにした曲だから、なるべくそれに近い場所にしていこうと変えました。
何もかも氷に包まれた場所という設定にしました。



衛星エウロパについてもネットで調べました。
大気があるかもしれないとか、生命体がいるかもしれないとか。
氷に包まれているけれども、大地の下は海の水が広がっているかもしれないとか。
大地は山も何もなく、平地が続いているとか。



なので、こちらで勝手ながら、海の波が出ているところと
山々がある場所と、その中に凍っている湖があるという設定にしました。



男の子の夢の中での設定なので、多少は目をつぶってください(^^::
男の子が夢の中で誰かに呼ばれるところまでを使っています。



3..que「wonderland」


この曲は、男の子がクレバスから落ちて、凍っている湖で目覚めるところから
最後までを使っています。



「wonderland」日本語だと「おとぎの国」。
素晴らしい場所っていう意味合いですね。



最後はハッピーエンドで終わりにしたいと思っていましたので
.queさんの曲で合っている曲は、私が知っている曲で言うとこの曲でした。
この曲は浮遊感があって、だんだんと上に駆け上がっていくっていう感じが気に入っています。
最後はふわっとゆっくり落ち着いて終わる・・・・。



この話をどうやって終わらせよう。
それが最後の課題でした。



最初はナレーションで、湖でおじさんや両親と再会を果たした男の子がみんなと話をして
そこから湖の外に目を向けると、他のシロクマ達やペンギン達が歩いている。
そこで終わりにしようと思っていました。



ただ、それだとなぜか納得がいきませんでした。
書いているうちに、なんか違うなと思いました。



それなら、男の子の視点で終わらせてみよう、と考えました。
おじさんと両親と再会して、また大好きなおじさんと一緒に住むことになった男の子。
また以前のような楽しい生活ができるようになるんだ。
男の子は期待に満ち溢れた感じで、空を見上げる。



空では、すっかり朝になって、太陽が出ている。
太陽の光が雲の一部に当たって、虹色に光っている。
これから何かが始まるように。



この雲は「彩雲」という現象で、雲を作っている水滴や氷の結晶によって太陽の光が屈折して
色が分かれて見えるそうです。南極で見られる現象だそうです。



最後に「彩雲」を持ってきて終わりにしたいとも思っていたので
その通りにできてよかったと思っています。



話はできたのですが、最後の最後でタイトルでつまづきました。
オーロラをタイトルに持ってこようかと思っていましたが
なぜか気が進まず。
しばらく考えた結果、でてきたのが「夢」でした。



最初に男の子が抱いた「夢」
それは、行方が分からなくなっているおじさんが、戻ってこないかなということ。
氷が溶けているので、寒い場所に行きたいということ。
その「夢」は、最後に両方とも実現しました。
(ちなみに、男の子が見た「夢」も含まれています。)
そう考えて、「夢」に決めました。



今回は最初から最後までいろんな課題が出てきましたが、書いているうちに得るものもあったなと思っています。
また、次回は「星の鏡」シリーズになります。
それまではしばらく、休ませてください・・・・・・(^^::